線路敷設権へのアクセスの促進 要望   日本政府は、電気通信のインフラ構築に欠かせない電柱、とう道、管路、および線路敷 設権への透明で迅速、非差別的、かつコストに基づくアクセスを確保する明確な規則を策 定すべきである。 背景  日本では、線路敷設権へ適切にアクセスできないことが、新規参入者が直面する深刻な 問題の1つであり、この事実は外資系および日本の事業者、経済企画庁、そして日本貿易 振興会(JETRO)も認識している。電気通信ならびに放送産業で競争を促進し投資を刺激す るためには、競争する電気通信事業者ならびにCATV事業者が、既存の電柱、とう道、管路 を含めて地上および地下に、ケーブルその他の設備を敷設することによって、ネットワー クを構築できることが必須である。このような土地および設備は稀少資源であり、これら を現在支配する電気通信事業者や公益事業者には、この支配を利用して競争事業者のビジ ネスを遅らせたり、そのコストを上昇させたりする強いインセンティブがある。  日本政府の研究グループが、1998年にこの問題を分析し、線路敷設権へのアクセスを向 上させるために通信事業者や電力会社が「自主」プランの作成を求める報告書をまとめた。 この報告書に対する意見書で、米国政府は、NTT、電力会社、鉄道といった通信産業に 財務上の利害関係があり、新規事業者の参入を遅らせることによって利益を受ける会社は、 競争を促進するような料金や条件を設定しないと指摘して、このような不適切な問題解決 の方法に深い懸念を表明した。公正な結果を生むためには、政府の監視が必要である。さ らに、民間所有の建物へのアクセスやCATV事業者の権利などのその他の重要な問題が報告 書では触れられていないことにも、米国政府は懸念を表明した。  予想したように、NTTおよびその他の公益事業者が発表した自主プランは、新規競争 事業者が直面する深刻な問題の解決にはならなかった。例えば、NTTは何年間も道路、 橋梁、その他の公的資源へのアクセスによって利益を得ていたにもかかわらず、いまだア クセスを拒否もしくは遅延させたり、法外な料金を請求したり、競争事業者のコストを上 げる数々の反競争的な条件を義務づけることができる。新規参入者によると、NTTは他 の国の10倍もの料金を請求し、事業者が自分の設備を設置したり保守したりすることを許 さず、使用ケーブルの種類を限定したりするそうである。日本の通信業界に積極的に参加 している電力会社が出した自主プランは、新規参入者にとって不可欠な設備である管路に ついて言及がない。さらに、このプランでは、電柱の補修(電柱1本につき最大200万円) や保守のために電力会社が請求する高い料金や、電力会社の関連会社への優遇措置などに ついては触れられていない。  鉄道会社も不可欠な線路敷設権を支配しており、通信事業に巨額の投資をしているが、 アクセスを向上させるプランは発表していない。最後に、道路、高速道路、橋梁、トンネ ル、その他日本の公共の線路敷設権へのアクセスは、他の国と比べて、その料金はまだ非 常に高く、時間もかかる。  日本で効果的な規制がないのと対照的に、米国の法律では線路敷設権へのアクセスの重 要性を認識し、支配的事業者または公益事業者に対して、CATV事業者もしくは電気通信事 業者に、その所有または支配する電柱、とう道、管路、もしくは線路敷設権への非差別的 なアクセスを、公正で適切な料金と条件で提供することを義務づけている。紛争は連邦お よび州の苦情処理手続きで処理される。WTOもメンバー加盟国に対して、線路敷設権を 迅速、透明、客観的、かつ非差別的な方法で割り当てるように求めている。日本が新しい サービスとインフラへの投資を刺激したいと思うならば、この問題をただちに解決しなけ ればならない。 *** BB-99-8J November 2, 1999