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パウエル国務長官:イラクの自主的武装解除に残された時間は少ない

コリン・パウエル国務長官記者会見 
2003年2月23日、米国大使館(東京)

 皆さん、おはようございます。再び東京を訪れることができて非常に嬉しい。短い滞在であるが、すでに小泉首相、川口外相と非常に素晴らしい話し合いをすることができた。また本日午前中に予定されている石破防衛庁長官との会談と連立与党幹事長との会談にも期待している。

 日米関係は、米国にとって最も重要な2国間関係のひとつであり、間違いなく最も強固な関係のひとつでもある。日米同盟は引き続き、ここアジア太平洋地域だけでなく地球全体の平和と繁栄の基礎となっている。9月11日の同時多発テロ事件以降、日米同盟は素晴らしい強靱性と柔軟性を示してきた。われわれは、日本が確固たる意志の下に世界的な対テロ作戦に参加してきたことに深く感謝している。日本は大きな貢献をした。例えば、日本国内のおよそ350のテロリストおよびテロ組織の資産を凍結した。日本は、国境警備、海上警備を強化し、また国連の反テロ条約にすべて加盟した。これは、われわれの世界的な対テロ戦争に対する日本政府と日本国民の掛かり合いの一例である。

 私は特に、われわれのアフガニスタンにおける軍事活動である「不朽の自由」作戦に対する日本の継続的な支援に感謝したい。また、アフガニスタンの人道的復興および難民救済活動に対する日本の重要な貢献に注目したい。さらに、昨日ここ東京で閉幕したアフガニスタンの復興会議(「平和の定着」東京会議)も、同国における国際社会の活動に対する日本の貢献の好例である。米国も、昨日の会議の一環として、この国際活動に1000万ドルを提供する意向を改めて確認した。このほかにも、米国は過去1年半の間に、何億ドルもの資金をアフガニスタンの復興活動に提供している。日本は、アフガニスタンの延滞金の清算、同国を政治的、経済的に統合する役割を果たすカブール・カンダハル・ヘラト環状道路の再建などの計画においても米国と協力している。これは非常に重要な道路であり、私はその建設、その再建に対する日本政府の貢献に改めて感謝する。

 小泉首相そして川口外相との会談では、皆さんのご想像通り、イラクの状況と今後国連が直面する問題について、かなりの時間をかけて話し合った。小泉首相には、米国が英国および他の国々と協力し、イラクが依然として国連安保理決議を順守していないこと、決議1441によって与えられた最後の機会をとらえていないことに国連が注目するよう、安全保障理事会が注目するよう、求める決議案を週明けに提出する、ということを伝えた。その決議案は、簡潔で的を射たものであり、提出後は、安全保障理事国間、また世界各地の指導者間で協議が行われた後、採決あるいは安保理の考慮するその他の措置を取るかどうかが決定される。

 しかしながら、結論は、イラクにはもう時間がないということである。われわれは、イラクが国際社会の意志を妨害し続けるのを手をこまねいて見ているわけにはいかない。問題は、査察官の増員ではない。問題は査察期間の延長ではない。問題は武装解除である。問題は、イラクが国際社会の意志に従い、自国の武装解除に参加し、査察官あるいはイラクで同国の活動を監視する人たちにその職務を遂行させること、その職務遂行に必要なものをすべて提供すること、である。イラクはいまだに申告の誤り、またその誤りをどのように訂正するのかを明らかにしていない。彼らは、「とにかくもう一度申告を読み直せ」と言い続けている。われわれは申告を読み直したが、やはり間違っている。それは、安保理決議1441の要求に従わない不正確な申告である。

 われわれはイラクが炭疽菌、ボツリヌス菌、ミサイルその他の恐ろしい兵器を保有し、何年にもわたって兵器計画を進めていることを知っているが、彼らは依然としてそれを明らかにしていない。イラクはこれらを自主的に申告し、その処置について監視員や査察官に知らせなければならない。査察官がこうした物質や計画を求めてイラク中を捜し回るという問題ではないのである。したがってわれわれは、当初決議1441を提出したときと同じ問題に直面している。それは、イラクが依然として決議を順守しておらず、国際社会、すなわち安全保障理事会は、イラクが武装解除すること、または多国籍軍がイラクへ行って武装解除させることを主張することによって、自らの存在意義を示す時が来ている、ということである。

 われわれはまた昨夜、小泉首相および川口外相と北朝鮮についても話し合った。日米の強力な同盟関係と緊密な協力の精神に基づき、われわれは北朝鮮の核兵器計画がもたらす脅威について話し合った。北朝鮮が寧辺のプルトニウム生産施設の凍結を解除し、核兵器用ウラン濃縮計画を進めていることは、核兵器のない朝鮮半島を実現するという、周辺諸国への約束、全世界への約束に違反するものである。われわれは、北朝鮮が核開発計画を検証可能かつ修復不可能な形で廃棄しなければならないということで合意した。北朝鮮は、核開発計画を中止しない限り、各国との外交関係による恩恵を期待することはできない。各国は、北朝鮮の国内問題、すなわち北朝鮮の経済問題、そして国民の食糧不足という対処しやすい問題について、北朝鮮を援助する意志と能力を持っている。われわれは援助をする準備ができているが、北朝鮮が核兵器能力達成の計画を放棄しない限り、そうした援助をすることはできない。そのような計画の放棄は、北朝鮮が何年も前に実行していたと国際社会が信じていたことである。われわれは、米国、周辺諸国、および国際社会からの保証として、誰も北朝鮮への侵略または攻撃を考えていないことを保証した。それにもかかわらず、北朝鮮が核兵器計画の追求を続けたことは、われわれすべてにとって懸念されることである。日本は、北朝鮮との接触において、このメッセージを強調した。われわれは、日本が主導的な役割を果たしていることに感謝している。

 私は、北朝鮮がその核兵器計画をめぐる国際社会の懸念にどう対応できるかについて、米国政府が北朝鮮と協議する意志があることを、小泉首相と川口外相に改めて伝えた。米国と日本は、こうした懸念への対処、またこうした会談や協議は、多国間で行われなければならないという点で合意した。それは、これが単に米朝間だけの問題ではなく、地域全体に影響を及ぼす問題だからである。それは、国際原子力機関(IAEA)がこの問題の国連安保理付託を賛成33、反対ゼロ、棄権2で採択したことが示すように、世界全体に影響を及ぼす問題である。そして、数日前、IAEA理事会はこの問題を国連安保理に付託した。

 われわれは、北朝鮮のミサイル計画、すなわち北朝鮮が通常兵器およびその他の兵器を国境を越えて発射する手段を得るためのミサイル計画について、日米両国が共有する懸念についても話し合った。言うまでもなく、これはわれわれの友好国日本にとって特に懸念される問題である。

 小泉首相、川口外相との会談では、拉致問題という深刻な課題にも触れた。日本では拉致問題は極めて微妙かつ深刻な問題であり、私は特に川口外相に対して、この問題について行方不明者の家族の皆さんに対する私の懸念、同情、そしてこの問題の結果として非常に長い年月にわたり引き裂かれている家族の皆さんに対する私の心情を伝えた。われわれは、拉致事件に関し、未解決のまま残されている問題に対する答を求める日本政府の努力を支持する。

 米国と日本は、他の多くの世界的課題でも協力している。米国と日本は、結核やエイズ・HIV感染症、マラリアなどの感染症撲滅に共同で取り組んでいる。両国はまた、われわれの多くが所与のものと受け止めているきれいな水の供給を、アフリカ大陸でも可能にするための重要で野心的な飲料水プロジェクトでも協力している。

 私は、日本が米国の重要な同盟国として、また世界レベルでのパートナーとしての能力を引き続き発揮できるよう、小泉首相の経済改革プログラムに対し強い支持を表明した。われわれは、日本経済が、力強く持続可能な成長軌道に復帰することを希望する。 改革こそが、日本の長期的な景気回復を可能にする唯一の手段である。私の判断では、力強い日本、そして日米の強力なパートナー関係は、アジア太平洋地域そして全世界の安定と繁栄にとって今後も極めて重要である。

 このような週末の訪日を受け入れてくれた日本政府の方々に感謝する。それでは皆さんからの質問をお受けします。

 この週末お集まりいただいた日本側の皆様にお礼を申し上げて、ご質問にお答えしたい。最初に、ジョージ・ゲッダさんからどうぞ。

 (AP通信、ジョージ・ゲッダ): 日米安保条約に照らして、米国は、北朝鮮をめぐる新しい安全保障の情勢において、日本の自衛に対する支援の追加を検討しているか。

 パウエル長官: ご存じのように、米国は定期的に日本と一連の対話を続けている。外務・防衛担当閣僚各「2+2」会合が比較的最近行われている。また私は、本日午前中に防衛長官と会談し、他になすべきことがあるかどうかを話し合う。現時点で、私はこの脅威の状況が大きく変化したとは考えておらず、現在われわれの安全保障関係に追加すべき新たな要素があるかどうかは分からない。しかし、本日これから行われる防衛庁との話し合いに期待している。後ろの男性、どうぞ。

 (テレビ朝日、鈴木悟): 国務長官、日本国民はイラクの状況を極めて深刻に見守っている。日本政府は、イラクに対する米国の姿勢を基本的に支持しているが、長官が国連安保理に提示した証拠も、米国が今開戦する必要性について日本国民の大多数を説得することはできなかった。そこで、日本国民に対して提示できる新しい証拠、別の証拠はあるか。また本日ここで、もう一度、今戦争が必要である理由を説明いただきたい。

 パウエル長官: まず最後の質問についてだが、戦争は必要ではない。おそらく戦争につながるであろう状況を作り出しているのはサダム・フセインである。恐ろしい兵器を蓄積しているのはサダム・フセインである。私が2月5日に国連安保理で発表した内容は、われわれの持っている証拠の概要であり、また実際に長期間にわたって知られてきた証拠の概要である。私はそれを皆が理解しやすい形にまとめて提示しようとした。しかし、それは空疎な非難ではなく、証拠の欠如でもない。証拠は存在する。初めから証拠がなければ、そもそも決議1441は採択されなかった。決議の冒頭には、イラクがその義務の重大な違反を犯していること、引き続き重大な違反を犯していること、そして長年にわたって事実を否定し続けていることが述べられている。イラクが核を使った大量破壊兵器の実験を行ってきていることがわれわれには分かっている。イラクが化学工場や化学物質を持っていることを証明するために、彼らの嘘を暴かなければならなかった。1990年代半ばには、イラクが生物兵器材料を持っていることを示すために彼らの嘘を暴かなければならなかった。彼らは炭疽菌やボツリヌス菌を研究していた。これらの兵器はいずれも、大量の人間を殺害することを唯一の目的とするものである。したがって、これは新しい証拠ではない。これ以上どのような証拠が必要なのか。彼らがこうした物質を保有していることは分かっている。われわれの現在の課題は、彼らがこうした物質について説明をせず、またそれがどうなったかについて説明しないことである。われわれは、それらがまだイラク国内にあることを示す証拠を持っており、私は2月5日にその証拠の一部を提示しようとした。そうした物質がもはや国内にはないことをイラクが実証できるまでは、国内にあると思わなければならない。

 イラクが武装解除を真剣に考えているならば、これは日本国民に直接申し上げたいのだが、イラクが武装解除を真剣に考えているならば、またイラクがこの12年間のようにわれわれをだまそうとしているのでなければ、彼らは全力を尽くして、あらゆる文書、あらゆる情報を提出し、われわれの希望する聞き取り調査をすべて許可し、聞き取り調査される者が脅かされることがないように、われわれの希望する場所で聞き取り調査を許可するはずである。イラクが真剣ならば、すべてのミサイルの所在を明らかにし、査察官が何かを発見するか、あるいは発見しないかを心配することはないはずだ。イラクが真剣ならば、この問題は短期間で決着をつけることができるはずである。われわれは完全な協力を得られるはずである。私がサダム・フセインの立場にあり、大量破壊兵器を保有していないと国連を説得しようとしていたならば、私に科学者や技術者の提示を要求する必要はない。私なら、科学者や技術者を全員連れてきて国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)本部前に整列させ、こう言うだろう。「全員連れてきました。どこにでも連れて行きどんなことでも聞いてください。誰も彼らを監視しないし、聞き取り調査を録音して後で報復をすることもない。連れて行って聞きたいだけ聞いてください。必要な文書があれば、科学者の自宅に送った文書もすべて提出します」

 この12年間変わらない欺まんのパターンはなかったはずである。もう「新しい証拠を見せろ」と言うのをやめる時が来た。証拠はある。証拠は明白である。証拠はこの12年間存在しており、特にイラクが査察官を追放した1998年までの証拠が存在する。したがって、もはや「証拠が不足しているから、または新たな証拠がないから行動を起こさない」と言っているだけでは不十分である。行動を取るときが来た。明白な証拠は常に存在してきた。彼らは有罪である。彼らが有罪であることを決議1441は述べている。そして決議1441は、彼らがこれを是正しなければ、彼らが今順守し協力しなければ、深刻な結果がもたらされなければならない、と述べている。われわれは、深刻な結果がもたらされなければならない時に来ている。

 (CBSニュース): 今の質問の延長だが、9・11同時多発テロの後には、フランスも含め世界中が米国に向かって「われわれもあなたたちと同じ米国人だ」と言った。先週末には、最大規模の一連の反戦・反米デモが行われた。ロンドンでのデモは間違いなく史上最大の規模だった。これらのデモは、長官の国連安保理での発表、査察官をめぐる出来事、イラクでの出来事に続いて行われた。米国が実行すべきだと考えていることと、他の国々の認識との間には大きな隔たりがあるように思われる。それはなぜなのか。また、こうした政策を提示し策定し、安保理を前にして世界を説得しようとした長官にとって、これは多少とも失望的なことではないのか。

 パウエル長官: 私はイラクの武装解除を要求するデモがあった方がいいとは思う。しかし、これまでの職業上の経験では、紛争勃発の直前に反戦への強力な支持が見られることは以前にもあった。誰も紛争を見たくはない。紛争の可能性が近い将来に迫っているときには、必ず「何かほかの方法はないものか」という声が高まる。私も何かほかの方法があればいいと思う。私はこれまでのキャリアを通じて、紛争以外の方法で問題を解決する道を探す努力をしてきたが、紛争が避けられない場合もあり、そういうときには各地でデモが行われようとも、自分が正しいと信じる行動、正しいと信じる政策を取り続けなければならない。人々がデモをするのは自由だが、彼らは、われわれのようには危険を理解していない。われわれは何年も前からこうした情報を調査し、証拠を調査し、イラクの欺まん、イラクによる査察官のけん制、イラクによる隠匿、かく乱の活動を見続けている。その結果、われわれはイラクが引き続きこうした兵器を保有し、維持しようとし、この種の兵器を開発する意図を全く捨てていないことを確信するに至っている。そして、それは世界中どこでも最も支持される行動ではないかもしれないが、何人もの首脳が支持を表明しいる。ブレア首相、スペインのアスナール首相、イタリアのベルルスコーニ首相など、多くのヨーロッパ諸国の首脳が支持を表明している。確かに、ヨーロッパその他各地で市民の反対がある。これは多くの人たちにとって難しい決断であるが、各国首脳が支持を表明しているのは、今から2、3年後にイラクが突然、誰の目にも明白な形でこうした兵器の存在を証明するという事態を回避したいからである。各国首脳は、ブッシュ大統領も明言したように、「全世界を動員していたときになぜ何らかの手を打たなかったのか」と自問する立場には立ちたくないからである。

 もうひとつ指摘しておくべきことは、11月8日の安保理協議で理事国15カ国が、十分な知識を持った上で、イラクが有罪であり、イラクは決議を順守すべきであり、順守しなければ深刻な結果に直面する、と述べたことである。それは空疎な声明ではなかった。われわれは、イラクが順守せず、協力せず、深刻な結果がもたらされる時期が来たとの判断を下す日が来るかもしれないと認識しながら、7週間にわたってこの声明をめぐり討議を続けた。

 (共同通信ワシントン支局、小片): 月曜か火曜に決議案が提出されることと思うが、採択までどの程度待つことができるか。数週間も待つのか、それとも数日間か。それが最初の質問。また、日本政府からどのようなサポートを期待しているか。小泉首相の支持、または首相が国連安保理メンバーに働きかけることを求めているのか。これが2番目の質問だ。

 パウエル長官: 2番目の質問については、昨夜小泉首相と話し合ったし、川口外相とも話し合った。首相と外相はこれまでもわれわれの活動を支持しており、われわれは今後も引き続き支持を得られることを希望している。その支援の一環として、通常の外交的な会談および政府、国家の首脳同士の会談において、引き続きわれわれの活動に対する支持を得られることを希望する。そして彼らが決議案の内容を見て決議案を支持し、投票をする安保理メンバーに接触して支持を呼びかけることを望む。それが外交努力の一環である。これとは異なるメッセージを呼びかける国々も必ず出てくると思う。したがって、来週決議案が提出された後に極めて活発な外交努力が始まるのは確かであり、われわれの努力を支持する国々がその外交力を駆使して支持を表明することを望む。決議案の提出から、その採択が可能かどうかの決断までには、そう長い時間はかからない。どの程度時間がかかるかを憶測することは控えるが、3月7日にはブリクス博士が安保理に報告をすることになっており、その報告が行われた後に、誰もが決断を下す最後の機会を与えられることになると考えている。そして、その直後に、安保理が何をすべきかの決断が下されなければならない。

 (毎日新聞、高畑): 日本へ再びようこそ。米国のもうひとつの同盟国であり、長官がこれから訪問される韓国についてご質問したい。われわれは、日米同盟が極めて強固であり相互に有用であることを大変嬉しく思っているが、最近韓国についてはさまざまな報道があり、特に若い世代が、彼らの長期的な未来は、歴史的にも文化的にも、米国や日本のような太平洋地域の勢力より、中国を中心とするアジア大陸の一員と考える傾向があるとされている。こうしたことが、最近の極めて不幸なできごとや、北朝鮮への対応などをめぐって米国と韓国に食い違いがあるとの報道の裏にあると思う。そこで、北朝鮮への対応において、米国が同盟国である韓国に対してどのような外交戦略を持っているのかについてお聞きしたい。

 パウエル長官: 私が今回アジアを訪問する理由のひとつは、韓国の盧新大統領の就任式に出席するためである。私が出席することは、米国が韓国との関係を重要視していることを表していると思う。私は、短い韓国滞在中に、盧大統領と韓国の国民に、われわれがいかに韓国に関与しているかを伝える。米国は過去50年余にわたり、韓国の強力な友好国・同盟国であり、今後もそうであり続ける。われわれは、米国が太平洋地域において、また特に東アジアにおいて、引き続き重要な役割を果たさなければならないと考えている。米国は、朝鮮半島における米国の活動のためだけでなく、地域の安定のために米国の存在が必要とされる限り、朝鮮半島における存在を維持する。

 韓国が米国や日本を親しく強力かつ重要な友好国と見なす一方で、中国に接近して強力かつ重要な関係を結ぶことに、全く矛盾はない。われわれは中国と重要かつ強力な関係を結んでいる。韓国がそうすべきでない理由はない。私は、この2つの要素が相互に矛盾するものとは思わない。

 私は、50年に及ぶこの関係の歴史を覚えていない韓国民がいることも認識している。われわれは、50年間の同盟がいかに韓国に利益をもたらしたかを、韓国民にもっとよく説明する必要があると思う。こうした米韓、日米、そして日韓の安全保障同盟が、強固な経済成長の条件をつくり出し、韓国を民主主義陣営に引き入れたのである。したがって、韓国はこの同盟から大きな恩恵を受けており、今後も引き続き大きな利益を得ていく。

 こうした関係には、緊張や課題はつきものであり、韓国の場合も例外ではないが、私はこの関係は引き続き強固であると考える。北朝鮮をめぐる問題であれ、韓国内の米軍展開の見直しであれ、今後前進していく上でのいかなる問題についても、米国は友好国である韓国と協力し調整していく。われわれは、韓国の友人たちとの緊密な調整なしに行動することはない。今週後半、韓国では大規模な集会が予定されているそうだが、それは意外なことに反米ではなく親米集会だと聞いている。

 司会:もうひとつ質問を受ける時間がある。そちらの方どうぞ。

 問(ワシントン・タイムズ、ニコラス・クラレフ): 北朝鮮との多国間交渉に関する長官の構想についてどのような話し合いが行われたか、もう少し詳しくお話しいただけるか。日本政府との間で相互にアイデアの交換が行われたのか。

 パウエル長官:われわれは今でも、北朝鮮の問題は多国間協議で解決されなければならないと確信している。日本もこの考え方を理解しそれに同意している。われわれは、「5+5」会合の構想を提案した。日本の友人たちにも、それを多少変えた構想があり、現在日米間で協議が行われている。しかし、われわれは多国間協議から始めなければならないと強く信じている。これは米朝だけの問題ではない。北朝鮮はそのような位置付けをしたがっている。前回がそうであり、当時われわれは問題は解決したと考えていた。しかし、1992年の南北朝鮮の非核合意、それに続く米朝間のさまざまな合意、あるいは声明や保証によって、寧辺の核の悪霊はつぼの中に閉じ込められたと誰もが考えた、という事実を忘れてはならない。誰もが寧辺について、「核の悪霊はつぼに閉じ込められたが、なくなったわけではなく、まだそこに存在する」と考えた。そしてわれわれは、1994年の枠組み合意後の期間の大半を通じて、北朝鮮が別の核兵器技術を開発していたことを知ったのである。これは協議開始を検討するに当たって、われわれ全員が深く懸念すべき点である。この協議は多国間で行われるべきであり、それによって今回は、朝鮮半島における核の可能性を除去する解決法を得るとともに、飢餓や破たんした経済という北朝鮮国民が直面する真の問題について同国民に援助を提供する、という保証を北朝鮮および地域の全当事国そして世界中の当事国に与えるべきである。プルトニウムは食糧にはならない。濃縮ウランは食糧にはならない。北朝鮮がこうした技術の追求を続ける限り、食糧生産あるいは国民を助ける経済開発の分野で援助を提供する能力を持つ国々は援助を提供することができない。したがって、われわれは前進の道を探さなければならず、それには地域内のすべての諸国、そして利害関係を持つすべての諸国が関与しなければならない。米国は、そうした枠内での自らの義務を認識しており、その義務を果たす準備がある。

 ありがとうございました。