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各国専門家、米国の新たな気候変動戦略を検討

ジム・フラー
「ワシントン・ファイル」スタッフライター 

2002年12月5日

 1300人を超える気候の専門家と科学者がワシントンに集まり、気候変動を取り巻く科学的に不確実な点を解明するため、米国の新たな戦略計画について話し合った。

 12月3日から5日まで開催された「気候変動科学計画企画ワークショップ」には、米国の気候変動研究戦略の草案を検討するため、米国をはじめ30カ国以上からの出席者が集まった。同草案は、米国の多省庁による、気候変動に関する年間研究計画(予算18億ドル)の優先事項を設定するものである。草案は11月11日に発表され、その作成には、現政権の「気候変動科学計画」に参加している13の連邦政府機関が関わった。

 この戦略計画は、気候および地球の変動に関する問題に関心を持つ科学者や利害関係団体からのコメントおよび提案を促す手段となることを目的としたものである。サム・ボドマン商務副長官は、ワークショップ参加者に向けて、戦略計画の目標は、政策立案者に役立つ情報を改善するための集中的な科学プログラムを築くことであり、それには関係者全員からの建設的な情報提供が不可欠である、と述べた。

 「連邦政府のあらゆる参加機関、業界団体や環境団体、世界の研究者ら、そして各国政府、州政府、地域社会からの意見を聞く必要がある」とボドマン副長官は語った。

 ワークショップ期間中、またワークショップの後2003年1月13日までのパブリック・コメント期間中に提出される計画草案に対するコメントに加え、新たに設置された全米科学アカデミーの全米研究評議会も同草案を検討中である。今後数年間の気候変動研究の方向を設定する計画の最終案は、2003年4月に発表される予定である。

 ブッシュ大統領は昨年2月、今後10年間で米国の温室効果ガスインテンシティー(温室効果ガス排出量/GDP)を18%引き下げると同時に、革新的なクリーン・エネルギー技術への投資に必要な経済成長を維持する、という国家目標を設定した。大統領はまた、主として化石燃料の燃焼によって発生する二酸化炭素など、地球温暖化の一因となる温室効果ガスの排出量を削減することを、産業界に求めた。

 現在見直されている戦略計画は、気候変動が起きていること、そして地球の表面温度が上昇しており、過去1世紀間にセ氏0.6度上昇したことを認めている。同計画は、昨年発表された全米科学アカデミーの報告書についても触れている。この報告書は、人間の活動が温室効果ガスの濃度上昇の一因であると述べる一方で、気候変動に関しては依然として科学的に不確実な点が残るとも述べている。米政府関係者によると、同計画の目標は、こうした不確実な点を解明するため、あるいはより良く理解するための戦略を詳細に示すことである。

 ドナルド・エバンズ商務長官は、ワークショップ開催に先立って「ワシントン・タイムズ」紙に発表したコラムで、気候変動に関する科学は、広く認められた学問としてはまだ初期の段階にある、と述べた。

 「われわれは、気候の自然の変動が温暖化に及ぼす影響を理解していない。また自然の炭素循環や水循環についても十分に理解していない。雲や海や煙霧質排出が地球の気候変動に及ぼす影響をまだ十分に理解していない。地球の気候がどのように変化し得るのか、また変化するのかを自信を持って予測することができない。どの程度の温暖化が危険な水準であるのかを確実に知ることができない」と同長官は述べた。

 この戦略計画は、科学的な記録の矛盾も指摘している。「温暖化の証拠に明らかに相反するのは観測記録の矛盾である。特に、地表で測定された温度の傾向と、衛星観測による対流圏下層および中層の測定温度の違いに関して矛盾があり、対流圏の温度は、20世紀最後の20年間に大きな上昇傾向を示していない。」

 さらに同計画は、「こうした矛盾の解消と測定能力の向上は、引き続き重要な課題であり、意思決定上、大きな意味を持ち得る」とも述べている。

 この新たな研究戦略は、3層の大きな活動分野に重点を置いている。それは、客観的であり、かつ十分に実証された科学的探究、必要とされる総合的地球データを提供するための観測・監視システム、そして様々な潜在的結果を探究する能力など決断を支持する手段の開発、の3つである。

 この戦略計画は、雲、煙霧質、および大気汚染が地球の気候に及ぼす影響を厳密に調査する高度なコンピューター・モデルの開発を主要研究活動の1つとすべきである、と述べている。同計画によると、現在のモデルでは、広範囲な気候の特徴のシミュレーションは可能であるが、対処すべき重要な不確実性が多く残っている。例えば、現在のいくつかのモデルによる予想では、21世紀における平均地表温度の上昇幅が、セ氏1度前後から5度以上まで、かなりばらついている。

 またこの計画は、もう1つの課題として、人間の活動が、観測される気候変動および気候への影響の原因であるのかどうかを見極めることを挙げている。これには、季節や年という、より短期間に起こる大幅な気温の変化の中で、10年ごとのかすかな傾向を検知することが必要とされる。

 前述の報告書は、たとえ科学界が「完璧な」地球気候モデルを開発できたとしても、エネルギー関連の温室効果ガス排出や森林伐採など人間活動による今後の気候変動の水準や速度を予想することは不可能である、とも述べている。その理由は、こうした活動は前もって決められたものではなく人間の選択によるものだからである、とされている。

 さらに、この報告書は、「われわれは、こうした条件を予想することはできないが、いくつかの異なるモデルを使用して、基本的な人間の原動力の異なる組み合わせがもたらす気候および環境への影響を予測することはできる。これらのモデルによって……政府、企業、地域社会は、インフラ活動や計画を修正し適合させることによって……被害を軽減し機会を活用することができる」と述べている。