環境ニュース
NIEHSニュース | 宇宙ベースの健康
宇宙で人工衛星が収集したデータに基づいてヒトの健康を増進すると想像しよう。 このコンセプトは未来の夢物語のように聞こえるが、専門家は現実性が� り、有益で� る潜在可能性を秘めていると考えている。 今月の記事(p. A738)では、人工衛星データを解釈して環境健康調査および公衆衛生政策に使用できる具体的なツールを作る可能性を検討するために、NIEHSと米国環境庁が主催した地球科学者と健康科学者の合同参加によるワークショップについて記述している。
FOCUS | 帰ってきた核
これまでの人類と核エネルギーとの関係は、気楽とも、実に快適とも言えるものではなかったが、人類は核エネルギー技術が有用で� ることは認めざるを得なかった。 過去数十年間、核エネルギーは巨額を費やした後に安全性に欠けることが分かり行き詰った状態で� ったが、最近になってようやく信頼できる電力源として再度注目を集めはじめた。 同記事(p. A742)は、人類によるこれまでの原子力の使用状況を振り返り、その使用に関連した利益とリスクを幾つか説明し、原子力が地球規模の発電の将来に役立つ方法を検討している。
SPHERES OF INFLUENCE | バイオマス・ブーム?
ガソリン価格が高騰を続ける中、代替燃料の研究も着実にヒートアップしている。 可能性が高い選択肢の一つはバイオマス・エネルギー(植物分子から生成する生物資源燃料)で� る。 同記事(p. A750)は、化石燃料依存を減らすために、現在のレベルを超えたバイオマスの使用を推薦している連邦政府の報告書を検証している。 人類は、これまでとは違った種類の自然の恩恵を、環境への影響を最小に抑えながら効果的に増加利用できるで� ろうか?
INNOVATIONS | 微生物燃料電池
地球の人口増加に連れて、私たちは増加し続けるエネルギー需要と増え続ける廃棄物処理の問題という苦しい状況に直面している。 現在、研究者たちはこの状況を打破するために、廃棄物をエネルギー源として使用する処理プロセスの開発に取り組んでいる。 同記事(p. A754)は、技術が完成すれば、家庭の生物ゴミから発電に利用できるエネルギーを生成できるという微生物燃料電池の使用法を検証している。
論評
集団の健康 | HYENAプロジェクトによる騒音曝露査定
Jarupら (p. 1473)は、Hypertension and Exposure to Noise near Airports (HYENA:空港周辺地域の高血圧と騒音曝露)と言う横断調査を使用した空港関連騒音の曝露が血圧と心血管疾患に与える影響を評価するためのプロジェクトを紹介している。 このプロジェクトでは、6つの欧州主要空港うちどこか1つの周辺に最低5年は住んでいる住民6千名(45〜70歳)を対象とした。 また、欧州連合出資によるAPMoSPHERE という別のプロジェクトから得られたデータを利用して交通関連の空気汚染物質曝露も査定した。
レビュー
遺伝子多型 | 遺伝要因と過塩素酸塩
過塩素酸塩汚染は、これまで考えられていたよりも広範囲にわたっている可能性が� る。 過塩素酸塩は、ヨウ化物を血漿から甲状腺へ輸送する甲状腺細胞表面たんぱく質で� るヨウ化ナトリウム共輸送体(symporter)に対して強度の抑制力を持っている。 Scinicarielloら (p. 1479)は、過塩素酸塩曝露に敏感な人口グループの特定に役立つ遺伝子バイオマーカーについて説明している。 甲状腺細胞へのヨウ化物輸送の異常、甲状腺細胞から濾胞内腔へのヨウ化物輸送の異常(Pendred症候群)、ヨウ化物の有機化傷害。 今後、ヒトの疾病と環境中の過塩素酸塩曝露に関する研究では、被験者の遺伝子配列、過塩素酸塩曝露レベル、個人のヨウ化物摂取/排出レベルを考慮しなければならない。
研究
呼吸器の疾病 | 超微粒子曝露と酸化DNA損傷
乗物の排気ガス中の超微粒子(UFP)は、心血管と肺の疾病やがんに関連している。 Vinzentsら (p. 1485)は、非喫煙の健常者を被験者として、携帯用機器を用いて呼吸ゾーンのUFP濃度を評価するため人体曝露の実験を行った。 酸化DNA損傷は、曝露を査定後の翌朝に血液から抽出した単核細胞のDNA鎖切断と酸化プリンによって、査定した。 屋外と屋内それぞれのUFP累積曝露量は、DNA中のプリン酸化レベルの独立予測変数としては有意で� ったが、DNA鎖切断は該当しなかった。 UFPの生物学的影響は中度の曝露で発生するが、これはUFPと健康への悪影響の関係の証明に役立つ。
毒物学 | ブレベトキシンと高密度脂蛋白質との関連
Woofterら (p. 1491)は、キャリアたんぱく質の中でのブレベトキシンPbTx-3の分布を調査した。 in vitroとin vivoの両方の実験で、ブレベトキシン免疫反応の過半数は、高密度脂蛋白質(HDL)を含有する勾配分画に限られていた。 ブレベトキシンとHDLの関連の情報は、毒物が組織に運ばれ組織から除かれる過程の理解に新しい基礎をもたらし、ブレベトキシンや関連のシガトキシンの中毒に対して、より効果的な治療方法の考案に役立つ可能性を持っている。
環境毒物学 | 両生類四肢の奇形
野生の両生類の四肢奇形を引き起こす原因はいまだ不明で� る。 Taylorら (p. 1497)は、バーモント州の湿地帯でアマカエルとアカカエルの変形に関する横断調査で、非外傷性の四肢奇形の独立リスク要因を査定した。 土地使用、開発段階、生物分類、水質を含む多重ロジスティック回帰分析モデルで、農業地への距離が四肢奇形のリスク増大と関連付けられた。 調査結果は、四肢奇形における毒性科学物質の役割を認め、この問題への疫学的アプローチの価値を明らかにした。
集団の健康 | リスク管理の科学的分析方法の作成
リスク管理は、環境健康危険要因に関する問題への対処の機会を提供している。 このアプローチで必要不可欠なのは、参加すること、すなわち双方向のコミュニケーションの機会の特定で� る。 Juddら (p. 1502)は、汚染した魚介類に関連した健康リスク分析において熱心な3グループ(アジア人と太平洋諸島住人の共同グループ、ネイティブ・アメリカンの2民族)のケース・スタディーを紹介している。 これらの例は、分析方法の作成に関する多様なコミュニティの参加オプションを示し、また、これらの活動に対する援助増加の必要性に焦点を当てている。
遺伝子多型 | 鉛作業者の型尿中酸と遺伝子多型
Weaverら (p. 1509)は、現役と退役した鉛作業者を被験者として、尿酸と鉛のレベルを腎臓検査の結果で� る δ-アミノレブリン酸脱水素酵素 (ALAD)、内皮一酸化窒素合成酵素 (eNOS)、およびビタミンD受容体 (VDR)と関連している3つの遺伝子多型のデータとともに分析した。 eNOSAspアレルを持つ被験者は、Glu/Glu遺伝子型を持つ被験者よりも、平均の漿液尿酸が低かった。 高齢の被験者では、多量の鉛はALAD1-1 遺伝子型を持つ被験者の高尿中酸と関連おり、異なるALAD1-2 遺伝子型を持つ被験者では、逆の関連が� った。 多量の脛骨中鉛は、異なるVDRBアレルを持つ被験者では高い尿酸と関連していた。 結果から、遺伝子多型は鉛に関連する腎臓への悪影響における尿酸の介在に変化を与える可能性が� ると判明した。
呼吸器の疾病 | 住居内と住居間のハウスダスト・エンドトキシンの多様性
エンドトキシン曝露は、子供のアレルゲン反応の決定要因で� る可能を持つ。 たった一回の測定で ハウスダストエンドトキシンの生後一年間における曝露を特徴付けるために、Abrahamら (p. 1516)は、同一住居内の各部屋と住居間におけるダストエンドトキシンを評価した。 レベルは夏が最高で、冬は最低で� った。 エンドトキシンの平均量は各部屋で有意な差が� った。 季節を加味して調整した結果、台所、寝室、居間の差異は、同一住居内の方が住居間よりも小さかった。 結果から、部屋間の差異と住居間の差異の方が、同一室内のエンドトキシン量の変化に影響を与える要因よりも、エンドトキシンの総合的な差異に影響を与えていることが分かる。
環境毒物学 | 環境汚染物質とヒスタミン受容体
重金属と殺虫剤は、多くの海洋生物の行動機能および神経内分泌機能に変化を及ぼす。 Giusiら (p. 1522)は、カドミウムと殺虫剤のエンドスルファンが、3種の主要なヒスタミン受容体(サブタイプ1、2、3)と硬骨類のベラ(Thalassoma pavo)の結合レベルの変化との相関関係で、中脳と視床下部におけるニューロン劣化を引き起こす様子を記述している。 3つのサブタイプのすべてで、カドミウムは脳内ほぼ全域の結合活動を低下させたが、タイプ2が主要ターゲットで� ると思われた。 逆にエンドスルファンは、視索前野の視床下部においてサブタイプ1と3のレベルを上昇させた。
曝露の評価 |尿中フタル酸レベルの予測変数
フタル酸はパーソナルケア製品に使用されている。 Dutyら (p. 1530)は、マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルにおける精液品質調査に参加している男性を被験者として、パーソナルケア製品での使用と何種かの尿中フタル酸代謝物質のレベルの関係について調査した。 モノエチルフタル酸(MEP)の中央値は、尿の採取前48時間以内にコロンやアフターシェイブを使用した男性(それぞれ265と266 ng/mL)の方が、使用しなかった男性(それぞれ108と133ng/mL)より高かった。 使用した製品が1つ増えると、MEPは33%増加した。 パーソナルケア製品をフタル酸の体内摂取の原因として特定することは、曝露の特徴付けの重要なステップで� ると言える。
心血管疾病 | 微粒子曝露と炎症
マクロファージは、炎症前のサイトカインを放出し内皮下部に泡沫細胞を形成することにより、アテローム発症における重大な役割を果たしている。 Vogelら (p. 1536)は、都市のダスト微粒子(UDP)のサンプルとディーゼル車の排気ガスの微粒子(DEP)に曝露した後のヒトのマクロファージ細胞系(U937)で発生した炎症反応を定量化し、 UDPとDEPの影響を対応する有機抽出物および裸粒子と比較した。 微粒子および有機抽出物の誘発によるシクロオキシゲナーゼ-2とシトクロムP4501a1の発現は、アリル炭化水素受容体抑制体の共処置により有意に抑制された。 このデータは、微粒子と炎症反応の間の相互作用と、心血管疾病の初期マーカーで� るコレステロール蓄積型の泡沫細胞の形成の様子を示している。
神経行動学的疾病 | 発揮性有機化合物、オゾン、ストレス
Fiedlerら (p. 1542)は、女性における計画的な発揮性有機化合物(VOC)曝露の健康への影響と心理的ストレスをオゾンの� る状態とない状態でテストした。 VOCをO3と混合したところ、アルデヒド、過酸化水素、有機酸、二次有機エアロゾル、超微粒子が生成された。 O3の有無に係らず、VOC曝露は有意な健康への影響をもたらさなかった。 心理的ストレスは、曝露の状態とは関係なく、唾液中のコルチゾールと心配の症状を有意に高めた。 肺機能も、神経運動性機能も、VOC曝露やVOC+O3曝露では低下しなかった。 健康のエンドポイントに影響を与えるという面では、ストレスの方が化学物質曝露よりも重大な要因で� ると言える。
Science Selections, p. A760も参照
リスクの特徴付け | 甲状腺撹乱物質の累積によるリスク
Croftonら (p. 1549)は、甲状腺撹乱性の化学物質の混合物が漿液中のチロキシン(T4)濃度に用量相加的に影響を及ぼすという仮説をテストした。 18種類の単体化学物質に曝露させた若い雌のラットでは、T4に集中的な用量反応が特定された。 化合物は環境中濃度に基づいて合成され、連続的希薄率は、バックグラウンドから、ヒトの1日摂取量のバックグラウンドの100倍まで変化させた。 最低薬量では混合の影響はなかったが、3つの最高薬量では混合により大きな影響が見られた。 多高薬量の混合モデルは経験的効果を2〜3倍過小評価していることが判明した。
Science Selections, p. A758も参照
毒物学 | 肺内での超微粒子分布
空気中の微粒子は、肺と心血管の機能不全による死亡率の増加と関連付けられており、超微粒子(UFP、0.1 µm未満の微粒子)には特定の毒性物学的役割が� る。 Geiserら (p. 1555)は、ラットのin vivo実験とマクロファージと赤血球を使用したin vitroのアプローチを組み合わせて、UFPの肺内分布と細胞への吸収について研究した。 呼吸により吸入されたUFPは、器官の管腔側と肺胞、肺内の主要部分と細胞、毛細血管内で見られた。 in vitroでの細胞への微粒子吸収は、拡散� るいは癒着性反応によって起こった。 細胞内の微粒子は膜結合性ではなく、細胞内たんぱく質、細胞小器官、DNAに接する。
Science Selections, p. A758も参照
毒物学 | 大気中微粒子の肺と全身への影響
幾つかの研究によって、濃縮大気中微粒子(CAP)による齧歯動物とヒトの健康への影響について報告されている。 しかしこれまで、齧歯動物に関する毒性物学上のエンドポイントには一貫性がない状態が続いてきた。 Kodavantiら (p. 1561)は、自然発生的に高血圧のラットと(もしくは)Wistar Kyotoラットを、フィルターを通した空気またはCAPに4時間曝露する実験を1日か2日行い、その後、洗浄可能な細胞の総数、マクロファージ、好中球、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活動、洗浄液中の血漿フィブリノゲンを測定した。 結果から、高分子とは関連がないがCAPの化学的調合に依存していると思われるラットの種特有の肺と全身への影響のパターンが示された。
環境毒物学 | 東グリーンランド北極熊の肝臓の変化
オルガノハロゲン化合物(OHC)は肝毒性を有しているため、Sonneら (p. 1569)は、1999〜2002年にサンプル収集された成熟雌雄、未成熟の東グリーンランド北極熊(Ursus maritimus)の肝臓組織を調査した。成熟雌では、肝細胞内脂肪がヘキサクロロシクロヘキサン合計濃度とともに有意に増加し、成熟雄の脂肪肉芽腫とヘキサクロロベンゼンとの関連も同様の有意差が認められた。 また、単核細胞浸潤を含む多くの顕微鏡レベルの変化も� った。 これらの関係と慢性炎症の性質に基づき、著者らは、この調査結果は高齢とOHCの長期曝露によって引き起こされたため、OHC曝露のバイオマーカーとして利用できると考えている。
心血管疾病 | PM2.5曝露源関連の心臓機能変化
Lippmanら (p. 1575)は、正常なマウスとアテローム性動脈硬化症のモデルマウスを、一日6時間、週に5日、5ヶ月間曝露させて、心拍数(HR)と心拍変動(HRV)を調査した。 マウスは、主要PM物質[二次硫酸塩(SS)、浮遊物質(SS)、残存油(RO)燃焼等]の大気中濃縮微粒子(直径2.5 µm未満、PM2.5)に曝露させた。 HRに関しては、RSでは曝露中に、SSでは曝露後の午後に有意な関連が見られた。 HRVに関しては、ROでは曝露後の午後に、SSとRSでは深夜に有意な関連が見られた。 生物学的基礎は、PM要素の異なる溶解性に関連している可能性が� る。
胎児の発育 |
下水汚泥は農業の肥料として使用できる。 Paulら (p. 1580)は、多様な環境化学物質が混入している下水汚泥を牧草地に散布して妊娠している羊を曝露させ、胎児の精巣の発達や機能を評価した。 この結果、胎児の体重は雄も雌も12〜15%減少した。 対照の胎児と比較して、処置した雄では、精巣重量が有意に減少し、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、生母細胞の数も同様に減少した。 実験の全体的結果から、現在混合されている環境化学物質に雄羊の胎児を曝露すると、精巣の発達とホルモン機能に重大な減退が起こる可能性が� り、これは成熟時にまで影響が残るかも知れない、ということが判明した。
バイオセンサー | In Vivo甲状腺機能の転写テスト
甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン、T3)は転写調節が主な性質で� るため、甲状腺シグナリングは転写アッセイ分析に従順で� る。 T3は両生類の変身を調節し、それによって甲状腺機能撹乱物質を特定する異常モデルを供給してくれる。 Turqueら (p. 1588)は、これら2つの利点を組み合わせ、ヒキガエル(Xenopus laevis)を使用してT3の転写作用を観察・定量化する手法を開発した。 体胚の形質転換体に2つのレポーターシステムを使用して前処理を施した。 転写アッセイは、環境中に実存する濃度(10-8 M)のアセトクロール(永続性の除草剤)に甲状腺機能撹乱活動を検知する。
環境毒物学 | 北極ベルーガのCYP1A1発現
シトクロムP450 1A1 (CYP1A1)の誘導は、� る種での多環式芳香族炭化水素の毒性効果と関連している。 Wilsonら (p. 1594)は、北極の2箇所とセント・ローレンス河口域で捕獲したベルーガ鯨の臓器中のCYP1A1たんぱく質発現を調査した。 これらの地域においてベルーガは、すべてのクジラ類の脂肪層におけるポリ塩化ビフェニル濃度が最低レベル(北極の2箇所)と最高レベル(セント・ローレンス河口域)に分かれた。 これらのベルーガに地域におけるベルーガのCYP1A1染色のパターンと程度は、CYP1Aを高度に誘発した動物モデルに見られるものに類似していた。 北極ベルーガのCYP1A1高レベル発現により、この種はアリル炭化水素受容体作用物質を介して誘導したCYP1A1に対して高度に敏感で� ると言える。
毒物学 | 有機スズによる11β-HSD2の抑制
有機スズは、農業や工業に広く使用されているが、食物連鎖中に蓄積し、何種類かの海洋生物にimposex(メスがオス化する現象)を引き起こし、より高等な動物に神経毒性や免疫毒性の影響を与える。 Atanasovら (p. 1600)は、有機スズが11β-hydroxysteroid dehydrogenaseタイプ2(11β-HSD2)を抑制し、活性11β-hydroxyglucocorticoidsを不活性11-ketoglucocorticoidsに変換するが、11β-HSD1は逆反応を引き起こすため、抑制しない。 11β-HSD2機能の障害によりグルココルチコイド濃度が上がると、胸腺や胎盤のようにグルココルチコイドに感受性の高い組織に有機スズ依存性の毒性の原因がみられる可能性が� る。
リスクの特徴付け | 飲料水中の硝酸塩と健康
一部の科学者は、飲料水中の硝酸塩に関する米国と世界保健機構のガイドラインは過度に保守的で� ると提唱している。 Wardら (p. 1607)は、2004年国際環境疫学会議の飲料水中の硝酸塩と健康に関するシンポジウムで、飲料水中の硝酸塩が N-ニトロソ基化合物の内因性形成物の原因となるという評価は、ニトロソ化率が高い人口グループを対象としたもので� ると報告した。 ニトロソ化先駆物質やニトロソ化抑制物質の摂取を評価した疫学研究のうち、現在の規制レベルを下回る飲料水中の硝酸塩濃度に関連した結腸がんと神経管障害のリスク増加を明らかにした研究の数は僅かで� った。
バイオモニター | バイオモニター提案
ヒトのバイオモニター調査によって、血液、尿、さらには毛髪や母乳などの組織や液体中の多様な化学物質に関するデータが提供されている。 Batesら (p. 1615)は、バイオモニターの3つの側面に焦点を� てることを目的として2004年11月に召集された多分野にまたがる研究チームによる提案について報告している。 その内容は、科学的に強靭な研究の特徴化、ヒトの健康に対する潜在的リスクを持つデータの解釈、結果の伝達、不確実性、バイオモニター研究の限界等で� った。
プロテオミクス | 環境にやさしいたんぱく質
Reinlib (p. 1622)は、環境にやさしいたんぱく質とパスウェイの今後の研究に対するアドバイスを求めて米環境健康科学研究所が召集したワークショップの概要をまとめている。 同ワークショップで最も多く挙がった提案には、構造分析、反応力学、調整/相互作用、多型、統合型経験的アプローチ等の研究への支援が� った。 またワークショップの参加者は、たんぱく質サンプルと高分子の組み合わせのスループットと純度を向上させることにも価値を見出した。
環境医学 腎臓/膀胱の疾病 | カドミウム誘引による腎臓への影響
一般人の腎臓に影響を与えるカドミウム曝露のレベルは特定されていない。 Åkessonら (p. 1627)は、53〜64歳の女性を被験者として、器官と腎糸球体との関連をみるためカドミウム曝露を調査した。 年齢、身体質量指数、血中鉛、糖尿、高血圧、腎毒性薬剤の定期使用を調整して指数回帰を行った結果、血中と尿中のカドミウムは腎臓器官への影響と有意な関連を示した。 腎臓器官と腎糸球体への影響は、これまで証明されてきたよりも低いカドミウム・レベルで発生した。 影響は小さかったが、より多くの人口グループにおける悪影響の前兆で� る可能性も� る。
Science Selections, p. A759も参照
子供の健康 呼吸器の疾病 | 空気汚染減少による健康への利益
Bayer-Oglesbyら (p. 1632)は、1990年代にスイスで実現した中程度の空気汚染レベルの低下が、学齢期の子供たちの呼吸器障害の減少と関連しているか否かを調査した。 社会経済的要因、健康関連の要因、屋内要因を調整後、PM10(直径10µm未満の微粒子)の減少はロジスティック回帰モデルで慢性咳、気管支炎、普通の風邪、夜間の空咳、結膜炎という各症状の減少と関連していた。 花粉の季節のくしゃみ、喘息、花粉症の症状の変化は、PM10の減少と関連していなかった。 空気汚染レベルが比較的少し変わっただけで良い効果が得られたため、PM10の悪影響の閾値は明確ではなかった。
胎児の発育 | 空気汚染と正期産児の出生結果
Salamら (p. 1638)は、胎児期の成長が少なかった正期産児の出生時体重に対する空気汚染の影響を調査した。 線形効果複合回帰を使用し、妊娠期全体を平均して24時間でオゾンに12-ppbの増加が� った場合は47.2gの出生時体重の減少と関連付けられ、この関連は妊娠2期と3期がもっとも顕著で� った。 妊娠1期の一酸化炭素曝露に1.4ppmの違いが� ると、21.7gの出生時体重の減少と関連付けられた。 第1期のCO曝露と第3期のO3曝露は、20%の子宮内胎児発育遅延のリスク増加と関連付いていた。
内分泌系 | ダイオキシンと新生児における甲状腺機能
Wangら (p. 1645)は、胎盤を通じてのダイオキシン/ポリ塩化ビフェニル(PCB)曝露と新生児の甲状腺/成長ホルモンの関係を調査した。 Inslin-like gwoth factor-1、IGF-binding globulin-3、およびチロキチン (T4) 甲状腺刺激ホルモン(TSH)が胎盤重量とケトレー指数の増加と関連していた。 多変量解析では、non-ortho PCBの増加に伴って、遊離T4xTSHが独立して有意に減少した。 結果から、視床下部への遊離T4フィードバックの有意変化が、in uteroのnon-ortho PCB曝露の結果で� ると判明した。 著者らは、新生児の甲状腺ホルモンレベルと甲状腺機能のルーチン検査を提唱している。
曝露の評価 | ワシントンの子供と労働者の農薬曝露
Fenskeら (p. 1651)は、ワシントン州で実施した有機燐化合物農薬研究で、尿中のdimethylthiophosphate (DMTP) 濃度と混合dimethyl alkylphosphate (DMAP)濃度を調査した。 農薬散布作業者の子供たちは、シアトルの子供たちや農業従事者の子供たちよりも代謝物質のレベルが高かった。 農村の子供たちの代謝物質レベルは、作物の農薬散布の時期に高まった。 りんごの間引き作業者のDMTP濃度は、ピーク曝露期外でサンプル収集した作業者のDMTP濃度の50倍で� った。 農薬に直接触れる労働者の健康は医療が集中的に関わるべきで� る。また子供の曝露は、作物の農薬散布の時期と散布者と住居をともにすることにより発生する可能性が高い。