環境ニュース
ウィスコンシンの研究所がゼブラフィッシュを集中研究
ゼブラダニオは発生毒性のモデルとして、多くの利点を持っている。今月のNIEHS News (p. A160)では、NIEHSがスポンサーを務めるウィスコンシン大学ミルウォーキー・キャンパスに� るMarine and Freshwater Biomedical Sciences Center(海水・淡水生物医学科学センター)が、ゼブラフィッシュとその他の海洋生物を次世代の典型的動物モデルにするための作業をどのように進めているかについて述べている。
五大湖の大問題
Focus (p. A164)では、現在の五大湖の状況を検証している。五大湖は、米国の淡水供給源の約84%を占めるが、長年にわたる深刻な汚染と珍種の侵略という問題を抱えている。汚染が最悪だったときと比較すると進歩が見られるが、五大湖はいまでも汚染物質に悩まされ続けている。この自然の源が安全な状態に戻る日が来るのだろうか?
山積する政策
五大湖は歴史と同様に政策も豊富で� る。米国連邦政府だけでも、五大湖の手入れと保全のために約140ものプログラムを有している。では、なぜ五大湖はいまだに危険に曝されているのか?Spheres of Influence (p. A174) では、五大湖に関連した歴年の立法措置を取り上げ、政策の重複、逸脱、単なる的外れ等の事項について論じている。
トマトの転換期?
トマト・エキスの効能が頻繁に発見されているが、市場では生産過多が起こり、フロリダのトマト生産者は多くのトマトが蔦についたまま腐ってしまうのを毎年見ている。Innovations (p. A178) では、フロリダ大学が開発した余剰トマトからエキスを作る安く効果的な手法について説明している。これは生産者と健康に気を使う人にとっては大変に嬉しいニュースだといえる。
研究
環境公衆衛生追跡
米国疾病管理予防センターは先ごろ、環境と慢性病のデータをリンクすることを目標とした全米環境公衆衛生追跡(EPHT)のネットワークについて発表した。Ritzら(p. 243)は、どんなすばらしいシステムが開発されようとも、データの正規リンク付けのみが効果的なEPHTプログラムに必要な手法ではないと注意を促している。第1の目標は、危険要因への曝露を阻止� るいは軽減し、慢性病のリスクを最小限に抑えるように環境への措置を講じることで� る。
ヒトの尿中の三価メチル砒素代謝物質
Valenzuelaら(p. 250) は、飲料水中の無機砒素(iAs)に曝露したヒトの尿中メチル砒素(MAsIII)およびdimethylarsinite(DMAsIII)の分析結果と、iAs毒性の皮膚部分マーカーの関係について調査した。この目的は、高度と低度のiAs曝露を受けた被験者それぞれの、尿中の三価および五価のAs代謝物質を分析調査することで� った。データを見ると、尿中のMAsIII濃度が、砒素の毒性効果と発がん促進の影響を受けやすい人の特定に役立つ可能性が判明した。
結晶体シリカ曝露
Yassinら(p. 255) は、1988〜2003年の労働安全衛生管理局(OSHA)の統合管理情報システム検査のデータを使用して、米国作業者の呼吸可能な結晶体シリカの粉塵曝露のレベルをまとめた。サンプル中の一人当たり8時間の加重平均したシリカ曝露平均値は0.077 mg/m3で� り、米国産業衛生専門家会議の限界値0.05 mg/m3を大きく超えている。曝露量は減少傾向に� るが、作業者の3.6%がOSHA許容値を越える量のシリカに曝露していることが、結果から判明した。
コウロギガエル性変化の傾向
Reederら
(p. 261) は、種の減少と性変化生殖腺を持つ個体の空間的・時間的分布との関係を解明するために、イリノイで捕獲し博物館の展示物とされたコウロギガエル(Acris crepitans)の生殖線を調査した。
有機塩素系殺虫剤(OC)が存在する以前(1852〜1929年)と比較すると、性変化するコウロギガエルの割合は産業発達とポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用初期の期間(1930〜1945年)に増加し、製造業が最高期でp,p-ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDT)とPCB使用期間(1946〜1959年)に最大となり、環境政策によってDDTの販売が減少した期間(1960〜1979年)に減少しはじめ、OCとPCBの削減期(1980〜2001年)を通じてその減少も続いている。(p. A182のScience Selectionsも参照)
食用魚中の水銀
人々の食用魚の危険性への注意は自ら釣った魚のみに集中しており、店で買った魚は大部分の人が食べている。Burgerら(p. 266) は、州内の地域、経済地域、店舗の種類によって水銀量が異なるか否かを断定するために、ニュージャージー州の店舗で売られていたマグロ、ヒラメやカレイ、青魚の水銀量について調査した。種によって違いが見られ、水銀量はマグロが最高で、ヒラメやカレイが最低で� った。店舗の種類や地域の経済状態などによる有意な違いは見られなかった。州の海岸沿いで捕獲されたヒラメやカレイの水銀量が、他の市場で買ったヒラメやカレイよりも高かった。(p. A183のScience Selectionsも参照)
PCB曝露とCYP1A2活性
シトクロムP450 1A2 (CYP1A2) は、一部の発がん物質の代謝活性に関連している酵素で� る。Fitzgeraldら(p. 272) は、セント・ローレンス川で捕獲した魚の消費により、ポリ塩化ビフェニル(PCB)に曝露したアメリカ先住民のCYP1A2活性について調査した。著者らは、血清PCBを分析し、カフェイン呼気試験(CBT)をCYP1A2活性を調べるために使用した。結果は、CYP1A2活性がヒトのPCB曝露の初期生物学的な効果のマーカーで� る可能性と、CBTが効果の監視に有用で� る可能性を示している。
ER-αに捕獲されたエストロゲン
河川の水と堆積物中のエストロゲン活動を仲介する化合物の特徴を特定する目的で、Pillonら(p. 278) は、高親和性のエストロゲン化合物が組替えエストロゲン受容体(ER)-αに捕獲され、転写活性化の選択的阻害を引き起こすアッセイをデザインした。このアプローチは、低濃度で高親和性の化合物を含む水サンプルを特定できるため、河川の堆積物中に� るリガンドを分離し、ERとアリル炭化水素受容体の確認ができる可能性が� る。
カルボフラン曝露とがんの発生
カルボフランは、種々の食用穀物に使用されているカルバミン酸塩殺虫剤で� る。Bonnerら(p. 285) は、Agricultural Health Study(農業健康調査)に参加したアイオア州とノースカロライナ州の殺虫剤使用認可保持者のカルボフラン曝露と腫瘍発生位置について調査した。生涯曝露日数が109日を越えた被験者は、生涯曝露日数が9日未満の被験者と比較すると肺がんの危険性は3倍高く、両方とも年間使用量と使用年数によって有意差が見られた。未曝露者を対象とした場合、カルボフランの使用は肺がんの危険性と関連付けられなかった。カルボフラン曝露は、他の部位に発生するがんとは関連しなかった。
空気汚染と呼吸器障害による入院患者
Luginaahら(p. 290) は、カナダのオンタリオ州ウィンザーで、1995年〜2000年に呼吸器障害で入院した患者を年齢と性別で分類し、空気汚染との関連を調査した。結果を見ると、NO2、SO2、CO、煙霧係数、PM10と呼吸器障害による入院との関連が見られ、特に女性について顕著で� った。呼吸器障害の入院患者では、オゾンと全還元硫黄の間に有意な関連は見られなかった。
臍帯中の化学物質測定
臍帯(UC)、臍帯の血清(CS)、母体の血清(MS)はすべて、胎児の化学物質曝露の評価に使用されている。Fukataら(p. 297) は、これら3つの母体・胎児の組織のうち、胎児の曝露の評価にはどれが最良で� るかを明らかにするために、これらの組織中で持続する化学物質間の関連を測定した。相関係数に基づき、UCが持続する化学物質による胎児の汚染状態を評価する最良のサンプルで� ると、彼等は結論付けた。CSの汚染レベルに基づいた評価は、過小評価となる可能性が� る。
空気汚染と心拍変動
心拍変動(HRV)の減少は心臓の自律機能低下のマーカーで� るが、これは空気汚染と関連している。Parkら(p. 304) は、2000年11月〜2003年10月の期間に、マサチューセッツ州ボストンの男性を被験者として、HRV[NNインターバルの標準偏差(SDNN)、高周波数領域(HF)と低周波数領域(LF)のパワー、およびLF/HF率]と環境中の空気汚染の関係を調査した。HRV、PM2.5およびオゾン間の関連はIHDと高血圧の被験者に強く示された。SDNNとLF、およびPM2.5の関連は糖尿病の被験者に強く示された。高血圧、IHD、糖尿病の患者では、空気汚染が自律機能不全の促進要因となる可能性が� る。
分解地域における共生の関連
共生発酵性微生物と生息地の関係の安定が、メタン生成条件下での塩素化芳香性化合物の無機物化には必要不可欠で� る。Beckerら(p. 310) は、塩素化芳香性化合物を無機物化した無気性微生物の生息地にいる種類の数の変化を追跡するために、核酸ベースで補完し� う2種の手法を使用した。結果から、メタン生成微生物が安息香酸から派生した電子供与体の流入によって利益を受け、汚染物質分解地域の「先天性疾病」様にメタンを産生する種の活動は密接につながっていることが判明した。
MTBEで汚染された地下水のバイオレメディエーション
燃料添加物のメチル-t-ブチルエーテル(MTBE)は、広範囲にわたる地下水汚染物質となってきた。研究室内での実験により、細菌類のPM1が地下水の体積物中のMTBEを生物分解することが判明した。Smithら(p. 317)は、カリフォルニア州オックスナードのPort Huenemeアメリカ海軍設営部隊センターのin situフィールド研究で、細菌類PM1をテストした。MTBEは、長期間のうちにPM1処理と未処理の地下水から減少していった。MTBEの除去には、自然発生した微生物種に酸素を添加するだけで十分で� った。
塩化農薬とマウスの自己免疫
全身性エリテマトーデス(SLE)は、男性よりも女性に影響を及ぼすことの多い自己免疫性疾病で� る。SLEマウスモデルで� る(NZB NZW)F1マウスでは、エストロゲンの有無がSLEの進行に影響を与える。Sobelら(p. 323) は、卵巣摘出した3匹の雌(NZB NZW)F1マウスに、塩化農薬を持続的に投与し、腎臓疾患の発生時期を測定した。彼らは、促進効果は農薬のエストロゲン効果によるものだという仮定を立てたが、子宮肥大を基に評価した自己免疫効果とエストロゲン性は、関与していなかった。(p. A182のScience Selectionsも参照)
脳中のエストロゲン活性の遺伝子レポーター
Trudeauら(p. 329) は、両生類のオタマジャクシ(学名Xenopus laevis)と金魚(学名Carassius auratus)の脳にエストロゲン・レセプターエレメント(ERE)ルシフェラーゼ構造を導入するために、in vivo体細胞遺伝子導入技術を使用した。オタマジャクシと金魚のERE依存性ルシフェラーゼのレポーター遺伝子の活性化は、水中のエストロゲンが、脳中のエストロゲン反応遺伝子の転写を直接調節できることを示している。この手法は、in vivoエストロゲン反応遺伝子の直接調節を研究するために、その他の水中生物にも適用できる可能性が� る。
将来に向けたヘルスモデルの開発
EbiとGamble (p. 335) は、世界的な環境変化という背景のもとで、ヒトのヘルスモデルとシナリオを作成する現行の方法を再検討するためにデザインされたワークショップでの作業について報告している。研究の主要議題は、方針を導き出すためのヘルスモデルとシナリオの開発と使用で� った。結果として、モデルとシナリオの開発と使用に対する研究のギャップと障害を特定した。
環境医療
砒素中毒の緩和
慢性砒素曝露は、内因性酸化窒素の全身性機能不全と関連している血管疾患を引き起こす。砒素汚染された飲料水を低砒素水と替えると、砒素中毒の緩和につながる可能性が� る。Piら(p. 339) は、この取替えの前と後のNOの脈管活性効果の尿マーカー、および砒素障害の患者の抹消血管機能を調査した。この緩和研究では、砒素障害を持つ患者の抹消血管疾患は曝露の停止により逆行する可能性が示され、砒素曝露に対する公共健康へのアプローチの面で意義深い。
子供の健康
子供の血液VOC濃度
Sextonら(p. 342) は、ミネソタ州ミネアポリスの2つの貧しい少数民族居住地で、子供たちから2年間にわたって採取した確率サンプル中の11種の血中揮発性有機化合物(VOC)濃度を測定した。National Health and Nutrition Examination Survey (1988-1994):NHANES IIIとの比較でみると、血中スチレン濃度は2倍、またサンプルの約10%では1,4-ジクロロベンゼンが10倍で� った。数多くのVOC二種組み合わせでは統計上の強い関連が見られたが、尿中コチニンと血中VOC濃度の間には有意な関連は見られなかった。同じ家庭内の兄弟姉妹の間では、血中VOC濃度の測定値に強い関連が見られた。
アイオワ農村部の子供たちの喘息と農場曝露
農場の子供たちは、農場外の子供たちに比べると、アトピー、アレルギー性疾患、喘息の報告例が少ない。Merchantら(p. 350) は、農村部とその他の環境のリスク要因の関連を特定するためにアイオワ農村部の子供たちを調査し、喘息に関して4つの結果を得た。医師が診断した喘息のケースは12%で� ったが、調査コホートの1/3以上で健康に関して少なくとも1つの結果を発見した。多変量モデルにより、いくつかの変数の間で独立関連が見られ、これには数多くの子供が罹患している喘息が含まれており、養豚農場に住む子供達(44.1%)と抗生物質飼料を使用している養豚農場に住む子供達(55.8%)の結果も示された。
高湿度とカビ
Jaakkolaら(p. 357) は、両親のアトピーとカビ曝露の併合効果について1〜7歳の子供を基準とした母集団に基づく6年の長期にわたるコホート調査を行った。結果の中で興味深い項目は、喘息の進行で� る。交絡因子を調整したポアソン回帰分析において、両親のアトピーの項目と家庭内のベースライン報告におけるカビ臭気の存在の項目は喘息の発生に関して独立した決定因子で� ったが、明白な相互作用は見られなかった。
血清と毛髪コチニンにみる人種の特徴
アフリカ系アメリカ人の子供たちは、タバコに関連した疾病の罹患率が通常より高く、血清コチニン濃度も高い。Wilsonら(p. 362) は、環境タバコ煙(ETS)曝露と住居の特徴を加味したうえで、アフリカ系アメリカ人の子供たちが血清と毛髪のコチニン濃度が高いか否かのテストを行った。ETS曝露、住居のサイズ、その他の人口統計的特徴を調整した後でも、白人の子供たちとの比較では、アフリカ系アメリカ人の子供たちの血清と毛髪のコチニン濃度は有意に高かった。ETS曝露が低い場合でも、喘息を持つアフリカ系アメリカ人の子供たちの血清と毛髪のコチニン濃度は有意に高かった。