環境ニュース ナノテクノロジーとは
ナノテクノロジー(サイズが小さいためにナノメーターの単位で測定される人口素材に見られる独特の化学的、物理的、電気的特性を作製、管理、使用する技術)は、 2015 年までに米国経済だけでも1兆ドルという巨額を創出すると予測されている。これらの小さな素材は魔法とも言えるような性質を持ち、繁栄を約束しているが、その反面、人間と環境衛生に及ぼす影響が増大している。Focus (p. A740) では、ナノテクノロジーの長所と欠点を検証している。
補助食品考察
栄養補助食品健康教育法は1994年に法令化したが、これは大衆に不注意な無規制の薬理活性を有する製品を� ふれさせ、時として壊滅的な結果を招くものだという見方が一部に� る。Spheres of Influence (p. A750) では、米国食品医薬品局が行っている植物性補助食品の監督方法改善作業と、それが産業に何を意味しているかを検証している。
綿繊維の新用途
米国で生産される綿繊維の4分の1以上が、収穫から織上作業にいたる加工の段階で失われている可能性が� る。Innovations (p. A754) では、ほぼ純粋に近いセルロース源のための綿繊維の新しい使用法について記述している。コーネル大学のチームは比較的良質な溶解液を使用して、電気紡糸によるナノファイバーを作製する供給原料とするために、綿繊維の廃物を圧縮している。
研究 ダイオキシンの見直し
限られた人体実験の結果および十分な動物実験の結果、aryl hydrocarbon receptor(Arレセプター)を含むメカニズムによる広範な情報に基づき、国際がん研究機関(IARC)は、1997年に2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)をグループ1の発ガン性物質に分類した。しかし、これまでこの分類を疑問視する傾向が一部に� った。Steenland ら(p. 1265) は、1997年以降に発見された疫学的証拠と機械的証拠を検証し、全般的に見てこれらの新しい証拠はIARCによる1997年の分類を� づけるもので� るという結論に達した。
発ガン性物質特定の科学と実際
発ガン性物質の特定は、ヒトの疫学的研究の結果の科学的評価、実験動物の長期バイオアッセイ、発ガン性物質とそのメカニズムの評価に関連しているその他のデータに基づいて行われる。Cogliano ら(p. 1269) は、多様なプログラムで使用されている発ガン性物質の評価に共通している科学的基礎を、IARCのモノグラフ・プログラムで現在使用している詳細な原理と手順の組み合わせを用いて説明している。
農薬の使用と非ホジキンリンパ腫の危険性
Kato ら(p. 1275) は、農薬への暴露が非ホジキンリンパ腫(NHL)の増加リスクと関連しているか否かを判断するために、ニューヨーク州北部の女性を対象として人口ベースの発生率ケースコントロール研究を行った。農薬を使用している農場で10年以上働いた女性のNHLの発生率は2倍で� った。農作業と農薬を使用するその他の仕事を組み合わせた場合には、就労期間が長くなるにつれてNHLの発生率は累進的に増加した。結果は、女性の農薬暴露とNHLの関連性を示唆するもので� ったが、原因を推定する際に調査対象者の選定と召集に限度が� ったことを考慮に入れる必要が� る。( p. A758のScience Selectionsも参照)
PM2.5 暴露と死亡率の関係
数多くの疫病研究が、ポアソンの一般的添加モデル(GAM)を使用して、多様なレベルのPM 2.5への反応としての死亡率と罹病率を特定してきた。これらのモデルは有用で� るが、PM2.5 への暴露による死亡率への影響の程度を直接測定することはできない。Holloman ら(p. 1282) は、3段階のBayesian hierarchical modelを従来のポアソンGAMの代替として提案している。ノースカロライナ州の7郡からのデータにこのモデルを適用することにより、PM2.5 の増加は同日とその後2日間における心血管死亡率の増加と関連していることが判明した。また彼らは、このモデルを従来のポアソンGAMの頻度論およびベイズ理論とも比較している。
初潮時の血清ダイオキシンと年齢
2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p- dioxin(TCDD)は、動物実験で思春期の発育の遅れと関連付けられている。イタリアのセベソで1976年に起こった化学物質の爆発は、人類に史上最大レベルのTCDD暴露を引き起こした。Warner ら(p. 1289) は、爆発直後に収集した血清の測定値に基づき、TCDD血清レベルと爆発時に初潮を迎えていなかった女性の初潮年齢の関連を調査した。個々の血清TCDD測定値と、このグループの女性の初潮年齢とは有意に関係していなかった。
コバルトとタングステン暴露のバイオモニタリング
EBCマロンジアルデヒド(MDA)を肺の酸化ストレスのバイオマーカーとして使用することを通じて、吐き出した息を冷却して作る呼気凝縮液(EBD)を吸入されたコバルトとタングステンの目標組織量と効果の査定に適切なマトリックスとして提案している。Goldoni ら(p. 1293) は、大量分光計基準技術を使用して、暴露した作業者と暴露していない作業者のEBC中のコバルト、タングステン、マロンジアルデヒドを調査した。EBC中のMDA量はCo濃度によって増加し、Wへの暴露によっても増加した。結果を見ると、EBCがバイオモニタリングと健康調査に有用で� る可能性を示している。
粒状物質と体系内微小血管機能
粒状物質(PM)への急性暴露は心血管機能不全の危険性を高めるが、PMが全身に対して影響を引き起こすメカニズムは不明で� る。Nurkiewicz ら(p. 1299) は、PMの代わりの石炭燃焼産物(ROFA)への肺の暴露がラットの全身性微小循環の内皮細胞依存性拡張に影響を与えるか否かを調査した。肺のROFA暴露は、平骨筋機能よりも、内皮に影響を与えることが判明した。彼らは、ROFAの暴露を受けたラット中での細静脈白血球接着とローリングの増加を発見し、体系内微小血管レベルでの局地的炎症の可能性を説いている。その結果、肺のPM暴露が全身性内皮細胞依存性の細動脈拡大を阻害することが判明した。
低硫黄燃料と触媒トラップによる毒性の低下
McDonald ら(p. 1307) は、感染、炎症、酸化ストレスへの抵抗性と関連付しているディーゼルエンジンの排気ガス(DEE)から健康への危害を削減するために、低硫黄燃料と触媒トラップの使用について研究した。マウスを使用して肺毒性査定を実施し、2003年認証燃料を使用して生成した非制御(ベースライン)DEE排気ガスと、低硫黄燃料と触媒化粒子トラップを使用して低減したDEE排気ガスを比較した。ベースラインDEEは、全測定項目で有意な生物的効果を引き起こした。低減排気は、これらの効果がほぼもしくは完全に消えていた。
セベソの被験者の発育期間における歯科的欠陥
Alaluusua ら(p. 1313) は、イタリアのセベソの汚染地域から48名の被験者を募集し、ダイオキシン事故の25年後の歯科および口部異常について調査した。暴露を受けた被験者からの冷凍血清サンプルは入手できたが、近隣からの対照者のサンプルは入手できなかった。発育段階でエナメル質の異常が� った被験者のうち93%は、事故当時5歳未満で� った。この年齢層での高率な異常は、血清のTCDDレベル(p = 0.016)と関連している。この結果は、ダイオキシンがヒトの器官形成を阻害しうるという仮説を支持している。
環境医療
神経異常と1-ブロモプロパン暴露
オゾン枯渇溶剤の代替品で� る1-ブロモプロパン(1-BP)は、再生性の毒物で� り、ラットに対しては神経毒性を有する。Ichihara ら(p. 1319) は、労働者における1-BPの神経学的影響と、暴露レベルの関係を調査した。暴露を受けた労働者は、年齢と教育程度が同等のコントロール被験者との比較で、Profile of Mood States(気分調査表)での振動覚、遠位潜時、ベントン検査スコア、うつ病と疲労の面で変化を示した。これらの結果から、1-BP暴露は末端神経または中枢神経に悪影響を与えることが判明した。
水銀の皮下注射:ケースレポート
金属の水銀は、民族医療で大きな役割を果たしている。Prasad (p. 1326) は、「魔よけ」のための水銀注射のケースを報告している。全身の高レベルの水銀により神経と腎臓の合併症が起こる可能性が� り、皮下注射は無菌膿瘍を引き起こす。治療の中心は、手術による除去、神経と腎機能の綿密なモニタリング、毒性が発見された場合のキレート化に� る。移民により人口動態が変化している今日、水銀の販売と使用の禁止対策、またその適切な処理が急務となっている。
子供の健康
水中の砒素と子供の知的機能
砒素暴露は成人に神経性の障害を生じさせるが、子供に関してはよくデザインされた研究はこれまで行われていない。Wasserman ら(p. 1329) は、バングラデシュのアライハザールで砒素暴露の集団研究に参加した両親の10歳の子供における知的機能の横断調査の結果を報告している。水中の砒素は用量相関性に知的機能の低下と関連付けられ、50 µg/L Asを超える量の含有水を飲用した子供は、5.5 µg/L As未満の含有水を飲用した子供に比べて、有意に低いPerformance and Full Scale のスコアを得た。( p. A758のScience Selectionsも参照)
アフラトキシン暴露と成長障害
アフラトキシンは、肝ガン誘発性と抗毒素性を持つ食物汚染物質で� り、動物の成長を妨害する。西アフリカの子供たちのアフラトキシン暴露は高濃度で� ることが知られているため、Gong ら(p. 1334) は、暴露による成長への影響を査定するために、ベニンで 8 ヶ月以上の長期調査を行った。年齢、性別、調査時の身長、社会経済的状況、村の状況、離乳状況を調整した調査の結果では、アフラトキシン・アルブミン中毒と身長の伸びには明確な反比例の関係(p < 0.0001)が見られた。同調査は、そのメカニズムは不明で� るが、アフラトキシンと成長障害の関係を強調するもので� る。( p. A759のScience Selectionsも参照)
新生児期にDEHP暴露を受けた青少年
柔かく、曲げやすいポリ塩化ビニル(PVC)プラスチックチューブの製造に使用されるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)は、使い捨てのPVC医療用具に広く使用されている。高度のDEHPに暴露される治療法には、血液交換の輸血、体外膜組織の酸素化(ECMO)、および心血管の手術が� る。Rais-Bahrami ら(p. 1339) は、新生児のときにECMOを施された14〜16歳の男性13名と女性6名を対象に調査を行った。これらの男女には身体的な発達と思春期の心理的な発達に関する有意な悪影響は見られなかった。甲状腺、肝臓、腎臓、男女の性腺機能の検査を行い、結果は性年齢分布において正常な範囲で� った。
[目次]
前回更新日:2004年8月16日
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